中鎖脂肪酸(MCT)の働き|エネルギーとケトン体
Now I have all the information needed. Let me write the article.
30代からの「がんばらないダイエット」に、MCTオイルという選択肢
はじめに|「バターコーヒー」って一時期バズったよね?
スレッズやInstagramで「MCTオイル」「バターコーヒー」という言葉を見たことはありませんか。数年前からじわじわ話題になっているこのキーワード、なんとなく「意識高い系の人が飲んでるやつでしょ?」と思っていた方も多いかもしれません。
でも実は、MCTオイルには日本の大学や食品メーカーがきちんと研究している科学的な裏付けがあります。そして、その仕組みを知ると「がまんしない」ダイエットのヒントが見えてきます。
この記事では、「防弾コーヒー(Bulletproof Coffee)」の生みの親であるデイヴ・アスプリーさんがなぜこのコーヒーを作ったのかというストーリーから始まり、MCT(中鎖脂肪酸)がなぜ「痩せやすい油」と言われるのか、なぜ「頭がスッキリする」と言われるのかを、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
引用している情報は、厚生労働省の資料、日本医療研究開発機構(AMED)の研究発表、日清オイリオグループの臨床試験、そして海外の医学論文などです。「なんとなく良さそう」ではなく、ちゃんと根拠のある話だけをお届けします。
防弾コーヒーの生みの親、デイヴ・アスプリーってどんな人?
シリコンバレーのIT起業家が「自分のカラダ」をハックし始めた
防弾コーヒーを世に広めたのは、アメリカ・シリコンバレーのIT起業家であるデイヴ・アスプリー(Dave Asprey)さんです。1973年生まれで、もともとはTrend MicroやCitrix Systemsといったテクノロジー企業の幹部として活躍していた、バリバリのビジネスマンでした(Wikipedia「Dave Asprey」より)。
ところが20代の頃、アスプリーさんは体重が約140kgもあり、体調も優れない状態が続いていたそうです。そこから食事や生活習慣を徹底的に見直す「バイオハッキング(自分の体を科学的にチューニングする)」にのめり込んでいきます。
チベットでの一杯の「バター茶」が、すべてのはじまり
2004年頃、アスプリーさんはチベットを訪れました。標高の高い山岳地帯で、現地の人々が飲んでいたのが「ヤクバター茶」。ヤクという動物のバターをお茶に入れて飲む、チベットの伝統的な飲みものです。
極寒の高地でこのバター茶を飲んだアスプリーさんは、体がポカポカ温まるだけでなく、頭がすっきりと冴えて、疲れが吹き飛ぶような感覚を得たそうです。この体験がきっかけとなり、帰国後に「コーヒー×良質なバター×MCTオイル」というレシピを試行錯誤。2009年に自身のブログで「Bulletproof Coffee(防弾コーヒー)」のレシピを公開しました(Fast Company、The New York Times 2014年12月12日の記事などで報道)。
ブログからベストセラー、そしてカフェへ
2014年に出版された書籍『The Bulletproof Diet(シリコンバレー式 自分を変える最強の食事)』はニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに入り、2015年にはカリフォルニア州サンタモニカに「防弾コーヒー」の専門カフェをオープン。シリコンバレーのエンジニアや起業家を中心に大流行し、その後、日本でも「バターコーヒー」として広く知られるようになりました。
アスプリーさんはなぜ「頭が冴える」と書いたの?
「ケトン体」という脳のごはん
アスプリーさんが本の中でもっとも強調していたのが、「MCTオイルを入れたコーヒーを飲むと、頭がクリアになる」という体感です。彼は「IQが20ポイント以上上がった」とまで主張しています(ただしこの数値については科学的な証拠は示されておらず、栄養士からは懐疑的な声も多いことを正直にお伝えしておきます。U.S. News & World Report 2014年12月24日の記事でも「カフェインによる覚醒効果にすぎないのでは」と指摘されています)。
では、なぜ「頭がスッキリする」と感じる人がいるのでしょうか。その鍵は「ケトン体」にあります。
ここからちょっとだけ体の仕組みの話をしますが、かんたんに言うとこういうことです。
私たちの脳は、普段は「ブドウ糖(糖質)」をエネルギー源にしています。ごはんやパン、甘いものを食べると血糖値が上がり、脳にブドウ糖が届いて「あー、働けるぞ」となるわけです。
ところが、ブドウ糖が足りなくなったとき(朝ごはんを抜いたり、糖質を控えたりしたとき)、体は別のエネルギー源を作り出します。それが「ケトン体」です。
ケトン体は、体にたまっている脂肪や、食事から摂った脂肪が肝臓で分解されるときに作られる物質で、脳のエネルギーとしても使えることがわかっています(東京農工大学・木村郁夫教授らの研究グループによるAMED発表、2019年11月5日)。
MCTオイルはケトン体を「つくりやすい」油
ここでポイントになるのが、MCTオイル(中鎖脂肪酸)はケトン体をつくりやすい油であるということです。
ふつうの食用油(オリーブオイルやサラダ油など)に含まれる脂肪酸は「長鎖脂肪酸」と呼ばれ、体内で消化・吸収されたあと、リンパ管を通って脂肪組織や筋肉、肝臓などをぐるっと回ってから、ようやくエネルギーとして使われます。
一方、MCT(中鎖脂肪酸)は分子の鎖が短いため、小腸から直接肝臓に届き、そこですばやく分解されてエネルギーになります。このとき、ケトン体も一緒に生まれやすいのです(日清オイリオグループ「MCTサロン」研究レポート)。
つまり、MCTオイルを摂ると→肝臓ですぐ分解→ケトン体ができる→脳のエネルギーになる、という流れが起こりやすいわけです。
アスプリーさんが言う「頭がスッキリする」という感覚は、このケトン体が脳にエネルギーを届けていることが一因ではないかと考えられています。もちろん、コーヒーに含まれるカフェインの覚醒作用も関係しているでしょう。ただ「油をプラスすることで、カフェインだけでは得られない持続的なエネルギー感がある」という主張には、ケトン体の仕組みを考えると一理あるといえます。
そもそも中鎖脂肪酸(MCT)って何? ── かんたんに言うと「すぐ燃える油」
「長い油」と「短い油」のちがい
油の成分である脂肪酸は、分子が鎖のようにつながった構造をしています。この鎖の長さによって、体の中での運ばれ方・使われ方がまったく変わります。
ふつうの食用油に含まれる脂肪酸は「長鎖脂肪酸(LCT)」と呼ばれ、炭素の数が13個以上あります。いっぽう、中鎖脂肪酸(MCT)は炭素の数が6~12個で、長鎖脂肪酸のおよそ半分の長さです(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書、脂質の章にて「中鎖脂肪酸(炭素数5~12個)は吸収された後、門脈に移行する」と明記されています)。
消化ルートがまったく違う
長鎖脂肪酸は、小腸で吸収されたあとリンパ管→血液→脂肪組織や筋肉…と遠回りして、余った分は体脂肪として貯蔵されます。
中鎖脂肪酸は、小腸から門脈(もんみゃく)という血管を通って、直接肝臓に運ばれます。肝臓に着くとすぐに分解が始まるので、エネルギーになるまでのスピードが長鎖脂肪酸の約4倍も速いと言われています(日清オイリオグループ「MCTサロン」体脂肪になりにくい中鎖脂肪酸レポートより)。
すぐに使われるから「余って体脂肪として蓄えられにくい」。これが、MCTが「痩せやすい油」と言われる一番の理由です。
自然界ではどこに含まれている?
中鎖脂肪酸は、ココナッツオイルに約60%含まれているほか、母乳や牛乳にも少量含まれています。赤ちゃんが母乳から効率よくエネルギーを得るために、自然が用意した仕組みともいえます。「MCTオイル」として売られている商品は、ココナッツオイルやパーム核油から中鎖脂肪酸だけを取り出して精製したものです。
MCTオイルで本当に痩せるの?── 研究データで見てみよう
「痩せやすい油」と聞いても、「本当に?」と思いますよね。ここでは実際の研究データを3つご紹介します。
研究①|世界13の臨床試験をまとめた分析結果(2015年)
2015年に学術誌『Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics』に掲載されたメタアナリシス(複数の研究を統合して分析する方法)では、合計749人を対象とした13の臨床試験のデータがまとめられました(Mumme & Stonehouse, 2015, PubMed ID: 25636220)。
結果は、ふつうの油(長鎖脂肪酸)を摂ったグループと比べて、MCTを摂ったグループでは体重が平均0.51kg減少、ウエストが平均1.46cm減少、体脂肪・皮下脂肪・内臓脂肪もすべて有意に減少していました。特に注目すべきは、血中の脂質(コレステロールなど)に悪影響がなかったという点です。つまり、「体には悪くないのに、脂肪が減った」ということです。
研究②|2024年の最新メタアナリシス
2024年に学術誌『Clinical Nutrition』に掲載されたさらに新しいメタアナリシスでは、MCTを含む食事は長鎖脂肪酸を含む食事に比べて、体重を平均1.53%減少させる効果があることが確認されました(PubMed ID: 38936302)。1.53%は、たとえば60kgの方なら約0.9kgに相当します。「たった1kgくらい?」と思うかもしれませんが、これは油を入れ替えただけで得られた効果です。食事量を減らしたり、ハードな運動をしたりした結果ではありません。
研究③|日清オイリオグループの日本人向け臨床試験
日清オイリオグループは、BMI25以上30未満の日本人の男女30名を対象に、1日わずか2gのMCTオイルを2週間摂取してもらうランダム化二重盲検クロスオーバー試験を実施しました。その結果、MCTを摂ったときは一般的な油(キャノーラ油)を摂ったときに比べて、日常生活レベルの活動をしているときの脂肪燃焼率が有意に高まったことが確認されています(日清オイリオグループ研究・技術開発事例ページより)。
ここで大事なのは、「1日たった2g」「特別な運動をしていない」という点です。2gというのは、小さじ半分にも満たない量。それだけで日常の脂肪燃焼が高まるなら、毎日のコーヒーや味噌汁にちょい足しする価値は十分ありそうです。
なぜMCTは「痩せやすい」の?── 3つの理由をやさしく解説
ここまでの情報を踏まえて、MCTが「痩せやすい油」と言われる理由を3つにまとめます。
理由① すぐエネルギーになるから「脂肪として貯まりにくい」
先ほども説明したとおり、中鎖脂肪酸は肝臓に直行してすぐにエネルギーとして使われます。長鎖脂肪酸のように、使いきれなかった分がお腹まわりの脂肪として蓄積される…ということが起こりにくいのです。
理由② 脂肪を「燃やすスイッチ」を入れてくれる
MCTが肝臓で分解されてケトン体が生まれると、体は「あ、今は脂肪を燃やすモードだな」と判断します。東京農工大学の木村郁夫教授らの研究(AMED発表、2019年)では、ケトン体の一種であるアセト酢酸が「GPR43」という受容体を介して、体の脂質代謝(脂肪の分解・利用)を促進することが明らかにされています。かんたんに言えば、ケトン体が増えると「体にたまった脂肪をどんどんエネルギーとして使おう」という信号が出やすくなるのです。
理由③ 腹持ちがいいから「食べすぎ」を防げる
米国の研究(Journal of Nutrition誌に掲載された総説)では、MCTを摂ることでエネルギー消費量が増え、満腹感を感じやすくなることが報告されています。油をプラスしているのに、結果的にトータルの食事量が減るという不思議な現象が、複数の研究で確認されています。防弾コーヒーを朝食の代わりに飲む人が多いのは、この「腹持ちの良さ」が理由のひとつです。
防弾コーヒーが「話題になった理由」を整理する
防弾コーヒーが世界中でバズった背景には、いくつかの時代の流れがありました。
シリコンバレーの「生産性オタク」文化との合致
2010年代前半、シリコンバレーではエンジニアや起業家の間で「バイオハッキング」がブームになっていました。睡眠・食事・運動をデータで管理し、自分のパフォーマンスを最大化するという考え方です。アスプリーさん自身がIT企業の幹部だったこともあり、「テック業界の人が飲んでるすごいコーヒー」というイメージが一気に広まりました。Fast Company誌が「シリコンバレーの新しいパワードリンク」と題した記事を掲載したことも、話題に火をつけました。
「糖質制限ブーム」の波に乗った
2014年前後は、世界的に糖質制限ダイエットが注目された時期でもあります。「糖質を控えて、良質な脂質を摂ろう」という流れのなかで、「コーヒーにバターとMCTオイルを入れる」というレシピは、まさに時代にぴったりでした。
「朝ごはんの代わり」という手軽さ
忙しい朝に、コーヒーにオイルとバターを入れてブレンダーで混ぜるだけ。調理の手間がほぼゼロで、しかも昼まで空腹を感じにくいという手軽さが、働く世代にウケました。日本でも2016〜2017年頃に「バターコーヒーダイエット」として紹介され、コンビニでもバターコーヒー風の飲料が販売されるようになりました。
注意点も知っておこう── MCTは「魔法の油」ではありません
ここまでMCTのメリットをお伝えしてきましたが、いくつか大事な注意点もあります。
飲みすぎるとお腹がゆるくなる
MCTオイルは消化・吸収がとても速いため、最初から大量に摂ると腸が刺激されて、お腹がゆるくなったり、腹痛を起こしたりすることがあります。最初は小さじ1杯(約5ml)程度から始めて、体の調子を見ながら少しずつ増やすのがおすすめです。
カロリーはゼロではない
MCTオイルも油ですから、1gあたり約9kcalのカロリーがあります。「痩せる油」だからといってドバドバかけてしまったら、単純にカロリーオーバーになります。いまの食事にプラスするのではなく、ふだん使っている油をMCTに置き換えるという意識が大切です。
アスプリーさんの主張には批判もある
アスプリーさんの著書や発言には、栄養士や医師から「科学的根拠が不十分」「動物実験の結果を人間にそのまま当てはめている」「都合の良い研究だけを引用している」などの批判があります。英国栄養士協会(British Dietetic Association)は、防弾ダイエットを「流行りのダイエット(Fad Diet)」のリストに入れています。また、Voxのジュリア・ベルーズ記者は「悪い流行ダイエットの戯画のようだ」と厳しく批評しました(Vox 2014年12月19日)。
MCTオイル自体には研究に裏付けられた効果がありますが、「防弾コーヒーだけ飲んでいれば痩せる」とか「IQが劇的に上がる」といった極端な主張は、話半分に受け止めるのが賢明です。
30代女性のための「MCTオイルの取り入れかた」
最後に、日々の暮らしの中でMCTオイルをどう取り入れるかをご提案します。
朝のコーヒーや紅茶に小さじ1杯
もっとも手軽なのは、朝のコーヒーや紅茶にMCTオイルを小さじ1杯入れること。そのまま入れるとオイルが浮いてしまうので、ミルクフォーマー(100円ショップで買えるもので十分です)でシャカシャカ混ぜると、クリーミーで飲みやすくなります。バターを入れる必要はありません。MCTオイルだけでも十分です。
味噌汁やスープに加える
MCTオイルは無味無臭のものが多いので、毎朝の味噌汁やスープにそっと加えるだけでも大丈夫です。家族が気づかないうちに、お子さんやパートナーの食事にも自然に取り入れられます。
サラダのドレッシングに混ぜる
MCTオイルは加熱に弱い(煙点が低い)ので、炒めものや揚げものには向きません。サラダにかけるドレッシングに混ぜたり、納豆にかけたり、「仕上げのちょい足し」として使うのがベストです。
1日の目安は小さじ1〜2杯(5〜10ml)
前述の日清オイリオの臨床試験では、1日2gでも効果が確認されています。まずは小さじ1杯から始めてみてください。
まとめ|MCTオイルは「家族のためにちょっといい油を選びたい」人にぴったり
「オーガニックじゃないとダメ」「添加物はぜったいNG」──そこまで徹底するのは大変だけど、「なんとなく、家族のために良いものを選びたいな」と思っている方にこそ、MCTオイルはおすすめです。
ふだんの油をMCTに少し置き換えるだけで、体脂肪がつきにくくなる可能性がある。頭がすっきりする感覚が得られるかもしれない。しかも母乳にも含まれている、もともと自然界にある成分です。
もちろん、MCTオイルだけで劇的に体が変わるわけではありません。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠があってこその「ちょい足し」です。でも、「できることからひとつだけ変えてみる」なら、毎朝のコーヒーにMCTオイルを一滴たらすことから始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献・出典一覧
国・公的機関の資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会報告書」第1章3節 脂質(中鎖脂肪酸の消化吸収経路について記載)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042631.pdf
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)プレスリリース「低炭水化物食や断続的断食による減量メカニズムの解明」2019年11月5日
https://www.amed.go.jp/news/release_20191105.html
企業の研究データ
- 日清オイリオグループ「BMIが高めの方の日常活動時の脂肪燃焼を高める中鎖脂肪酸の機能を明らかに」
https://www.nisshin-oillio.com/company/rd/dokuji/mct.html
- 日清オイリオグループ MCTサロン「体脂肪になりにくい中鎖脂肪酸」
https://www.nisshin-mct.com/contents/page199.html
海外の学術論文
- Mumme K, Stonehouse W. "Effects of medium-chain triglycerides on weight loss and body composition: a meta-analysis of randomized controlled trials." J Acad Nutr Diet. 2015 Feb;115(2):249-63. (PubMed ID: 25636220)
- "The impact of medium-chain triglycerides on weight loss and body composition." Clinical Nutrition. 2024. (PubMed ID: 38936302)
防弾コーヒーの著者について
- Wikipedia "Dave Asprey" https://en.wikipedia.org/wiki/Dave_Asprey
- Rubin C. "The Cult of the Bulletproof Coffee Diet." The New York Times. 2014年12月12日
- Khan A. "The Bulletproof Diet Is Anything But." U.S. News & World Report. 2014年12月24日
- Belluz J. "The Bulletproof Diet is everything wrong with eating in America." Vox. 2014年12月19日
OIL&LIFEのMCTオイル
OIL&LIFEでは、ココナッツ由来のMCTオイルを取り扱っています。毎朝のコーヒーや味噌汁に「ちょい足し」して、体脂肪がつきにくい習慣を始めませんか。